三草山のゼルフィスの森
ヒロオビミドリシジミ
ウラナミアカシジミ
ミズイロオナガシジミ
三草山(みくさやま)ゼフィルスの森は、大阪府能勢町と兵庫県猪名川町の府県境にある三草山(標高563m)の山麓部にあるナラガシワやクヌギ・コナラなどの落葉広葉樹を主体とした14.48haのエリアです。ゼフィルスとは、「森の宝石」とも呼ばれるミドリシジミ類のチョウの総称で、この森では、日本に生息するミドリシジミ類25種類のうち10種が確認されています。なかでもヒロオビミドリシジミ(大阪府絶滅危惧Ⅰ類)にとっては府内唯一の生息地であり、国内の分布の東限にあたります。
ゼフィルスの森では専門家の調査・研究をもとにチョウを指標とした森の植生管理を行っています。チョウは種ごと、幼虫・成虫によって食べるものが異なるため、多様な食草・食樹を支えるための里山管理を行っています。スミレ食や訪花性のチョウのためには、草本植物が育成する明るい林床になるよう定期的に伐採しササを刈ります。しかしササ類を食草とするチョウのためには、ネザサを含む林床植生が必要です。そこでササを刈り込む区と放置する区を配する「縞状管理」を行っています。多くのチョウがいる森は、それらを支える多様な植物が生育している森ということです。里山管理を行い、植生を豊かにし、チョウたちが棲みよい場所にする保全活動は、チョウだけでなく多くの生きものを守ること、生物多様性を向上させることにつながります。
三草山の麓にある神山(こやま)棚田では、遊休農地再生事業「タガメの田づくり」の活動を行っています。かつてススキやササ、低木で覆われていた遊休農地を、多様性豊かな稲作水系へと復活させるべく、昔ながらのお米づくりをしながら棚田の維持管理を行っています。残念ながらシンボルであるタガメ(大阪府絶滅危惧Ⅱ類)は現在活動場所では確認されていません。タガメはカエルや昆虫類を食べる大型昆虫で、食物連鎖の上位にいる生きものです。つまりタガメがいるということは、多くの生きものがいるということです。活動を通じてタガメが戻ることを目標にしています。“里山”のゼフィルスの森に対して「タガメの田づくり」を“里地”とし、より多くの生きものが棲む里地里山一連の保全活動を行っています。
【春】田んぼや畑の整備、田植え(5月)
【夏】草刈り
【秋】稲刈り(9月)、田んぼの土あげ
【冬】ため池整備、冬支度(しめ縄づくり、餅つき)(12月)
「能勢みどりすとクラブ」
能勢の自然に魅了されて、この環境を後世まで残したいと思い日々活動しています。最近見なくなったな、と思われる植物や動物が、能勢に行ったら見られるよ!!というような場所にしたいと考えています。ここでは四季を通じてたくさんの草花や動物に出会えます。そしてお米はもちろん、いろんな野菜や山菜など自然の恵みも楽しみのひとつです。みんなでその場で調理していただくこともしばしば。日常とはちょっと違う体験してみませんか。ご参加お待ちしています!
〈活動日〉毎月第1水曜日・第3日曜日
〈集合場所・時間〉能勢電鉄山下駅9時30分集合。乗合で活動地まで行きます。
かつて薪炭林として活用されてきた三草山は、時代とともに薪や炭が使用されなくなり、放置されることにより森は荒廃し、ゼフィルスをはじめ多くの生きものにとっては棲みづらい環境となりました。かつての里山管理を行うことでゼフィルスが舞う森をよみがえらせたいと、1992(平成4)年「ゼフィルスの森トラスト運動」がスタートしました。2014(平成26)年には学識経験者、地元関係者、保全活動ボランティア、行政をメンバーとする「三草山ゼフィルスの森保全検討会議」が設置され、保全活動推進のための話し合いが行われています。
1990(平成2)年
保全基礎調査
1992(平成4)年
ゼフィルスの森トラスト運動スタート
大阪府緑地環境保全地域に指定
1993(平成5)年
土地所有者と地上権設定契約を締結
1995(平成7)年
ゼフィルス観察会スタート
2007(平成19)年
大阪府緑地環境保全地域 保全計画が変更
2008(平成20)年
休耕田を利用したナラガシワの苗木づくりスタート
2009(平成21)年
三草山のふもとで「タガメの田づくり」スタート
2014(平成26)年
ナラ枯れ確認
三草山ゼフィルスの森保全検討会議設立
能勢みどりすとクラブ発足
2015(平成27)年
萌芽更新3ヵ年計画スタート
2018(平成30)年
7月豪雨、台風21号により大規模な崩落や倒木が発生
「「三草山ゼフィルスの森」におけるチョウ類群集の24年間の変化」
2019年 石井実・浅井悠太・ 上田昇平・平井規央
自然環境を守る