活動報告
当協会は、日本自然保護協会(以降「NACS-J」)連携し「能勢ネイチャーポジティブプロジェクト」(詳細は最下部にリンクあり)に取り組んでいます。同プロジェクトの一環として、6月6日(土)に「指標種による生物多様性評価手法」(以降、「評価手法」)の勉強会をNACS-Jと共催で実施しました。当日は、能勢町内外の生きもの好きの方々約40名が集まりました。
新たな「評価手法」は、NACS-Jが、ネイチャーポジティブの実現に向け、「自然の状態」を定量的に評価するために、国立環境研究所をはじめ、さまざまな研究機関に所属する各分類群の専門家とともに開発し、2025年5月に公開されたものです。(詳細は最下部にリンクあり)
午前中は、大阪府立豊中高等学校能勢分校生物教室にて座学を行いました。この評価手法の開発者であるNACS-Jの高川晋一さんより、この手法を生み出した背景や、生物多様性やネイチャーポジティブの動向、そして能勢ネイチャーポジティブプロジェクトのこれまでの取り組みについて、最新情報を交えながら解説いただきました。
講義の中で詳しく紹介された本評価手法で使用する「指標種」とは、環境の良好さの程度を知る目安となる生きもののことで、蓄積された膨大な調査データを元に選定されました。本評価手法は、これら指標種の「種数」に加えて、「出現頻度の低い希少種が生息しやすい場所か」という2つの要素から生態系の状態を点数化することが大きな特徴です。

概要説明に続いて、今回観察する植物とチョウの「種同定(しゅどうてい)」について専門家より学びました。種同定とは、観察した生物がどのような種か特定することです。
植物については、神戸大学名誉教授の武田義明先生に講義いただきました。植物の分類や植物用語について解説いただく中で、近年インターネットでの画像検索の精度が上がっていることから、「まずは画像検索してアタリをつけてから図鑑を調べるのがおすすめ」という実践的なコツを教えていただきました。また、植物によって同定で確認する場所が異なることから、標本採集時は同定ポイントをもれなく採集するようにとのアドバイスをいただきました。

チョウについては、貝塚市立自然遊学館博士研究員の天満和久さんに講義いただきました。能勢は伝統的な栗栽培によって草原環境が維持されているため多様な昆虫が生育でき、大阪府内で確認された約100種のチョウのうち、能勢町内では9割が観察可能であることを教えていただきました。また、「観察ガイド おおさかのチョウ(監修 大阪府立大学昆虫学研究室)」をテキストに、色のバリエーションやグループ毎に異なる飛び方、成虫・幼虫の食性について詳しく解説いただきました。

午後は吹田市の和菓子屋「津村屋」さんが能勢で銀寄栗を栽培されている栗林に移動し、現地実習を行いました。この栗林は国の自然共生サイトにも登録されています。津村屋店主の角村茂さんは、いろいろな生きものが共存できるように、全体的に草刈りを行わず、あえて背丈ほどの繁みを残す場所をつくるなど、工夫しながら管理をされているそうです。実習では6つのグループに分かれ、各リーダーの元、指標種チェックリストを片手に植物観察し、同定が難しい植物については採集を行いました(※今回特別に採集の許可をいただきました。)。

現地実習後は再び生物教室に場所を移し、植物同定の実習を行いました。スマートフォンで画像検索し、図鑑をめくりながら同定を行いました。グループの垣根を越え、協力し合って同定を行っている参加者の皆さんの姿が印象的でした。
また、チョウを含む昆虫について観察・同定を行った天満さんや、同じく貝塚市自然遊学館の鞍井希凪さんより、採集された個体をスクリーンに投影しながら詳しく解説していただきました。


最後に本勉強会のまとめとして、高川さんより本評価手法を用いた生物多様性の定量的評価について解説いただきました。今回の現地実習で確認された指標種は、植物17種、チョウ2種でした。
この調査を同じ場所で継続的に実施することで、生物多様性の変化を視える化できます。また、近隣のさまざまな場所で実施することで、各所における生物多様性の状態を定量的に比較することが可能となります。

本勉強会では、どこにでもある身近な種から里山らしい種まで観察でき、能勢の生物多様性の豊かさを改めて実感することができました。また、さまざまな年代、異なる背景をもつ方々が、生きものを通じて楽しそうに交流している姿が印象的でした。
こうした継続的な調査には、地域にお住まいの方々をはじめ、多くのみなさまの協力が必要です。今後も本プロジェクトに温かいご関心を寄せていただけますと幸いです。
ご参加してくださったみなさま、ありがとうございました!